「だいぶ片付いてきたねっ!あと少し!終わったら焼肉でも食べにいこう!」
「おいー。俺らみたいな貧乏学生が引っ越し費用だけでも大変なのに焼肉はないだろうーがw」
「えー。駅前の食べ放題なら3000円くらいで食べれるからいこーよー」
「その3000円が痛いって話だから!明日には大家さんに待っていてもらった前家賃も払わないだし。」
「ぶーーーー」
<某年・9月下旬>
※交際2か月後
すずと、順一は付き合って2か月。
同じ大学に通う二人。同じバスケットボールのサークルで知り合い、恋に落ちた。
お互い主要都市から離れた田舎町で育った二人。
自然の中で育った二人は東京の大学に通う同サークルの人のスピードにどこか慣れ親しむことができずにいたが、5月に行われたサークルのBBQで隣同士になり惹かれ合った。
告白したのは順一だった。
すずはすぐにOKをした。
同じ学校。同じサークル。
似た様な生活スタイルで過ごす二人は、付き合って2か月記念を境に1DKの安アパートを借りて一緒に住むことにした。
「一緒に住んだら家賃も半分だし、毎日一緒にいられるからいいだろ?」
「いいけど、なんかちょっと恥ずかしいなぁ...」
「何言ってんだよ。全部もう見せてるくせにw」
「ばか!笑。やめてよもう!」
知り合ってから2か月後の夏に二人は付き合い、その1か月後には身体を重ねた。
順一にとっては二人目の彼女。
すずにとっては初めての彼氏。初体験の相手だった。
もっとも初体験と言う意味では順一も同じだった。
だが、順一はすずには『体験済み』とうそをついて、必死に童貞をごまかした。
何もかもが初体験のすずはそんな順一に気付くこともなく、順一のリードで二人の愛は順調に育まれていった。
あの、最悪な二人に出会うまでは。
<同棲二日目>
「うわ。このカーテン、カーテンレールがないんだけど!」
「え、ホント?カーテンだけあっても意味がないじゃない」
「仕方ない。明日区役所に転入届出すついでに買いにいこ」
「え、、、カーテンないなんて無理だよ。丸見えじゃん。着替えられないって...」
「え?トイレとか洗面所で着替えればいいじゃんか」
「それもそうだけどさ。こんなピチピチの18歳の乙女の家着姿丸見えはやばいでしょ?笑」
「何言ってんだよw」
「ねー買いにいこーよ!それで帰りに焼肉でいいじゃん」
「わかったよ。っていうか焼肉はダメだってば!w俺がホームセンターで買って来るから、その棚でも組み立てておいて」
「えー焼肉なしー?まあ、いいや。何かとお金かかるしね」
「焼肉は月末のバイト代が入ったら俺がおごってやるから、ね?」
「もー!絶対だぞー!」
<ホームセンター 18時>
「これか。ようやくあった。一番安いのでいいや。壊れたらまた買えばいいし」
大型のホームセンターでカーテンレールをようやく見つけた順一。
時刻は18時を回っていた。
「帰ったらカーテン付けて、あの棚を片づけて、あ、ベッドのフレームもか。昨日はマットレスだけで”シた”からな」
同棲二日目。
未だに片づけが終わってはいなかったものの徐々に二人の空間が創られていく。
大好きなすずと一緒に過ごす毎日。
SEXも覚えたての順一は、毎晩の様にすずを抱くことができることが嬉しくて仕方なかった。
「そうだwコンドーム買っちゃお!カーテンレールとコンドームってレジに出すのもちょっと恥ずかしいなw」
カーテンレールとコンドームを手に持ち、レジに並ぶ順一だったが。
ズボンの後ろのポケットに財布がない事に気づく。
(え...うそだろ......マジか...やば...)
家に忘れたかと思ったが、ホームセンターの入り口で残金を確認したことを思い出す。
焦りだす順一。財布には明日支払予定の前家賃代も含めて10万円が入っている。
しかも、同棲初日に二人でなけなしのお金を出し合ったこともあり、その内半分は実質すずのお金であった。
「ま、まって。入り口はあった。そこら店内を彷徨って、、カーテンコーナー行って、、医薬品売り場でゴムを見て、、しゃがんだのはカーテンコーナーだ。あそこでケツから落ちたとしか…」
順一は急いでカーテンレールを手に取った場所に走る。
大慌てで向かう順一。
そこで、突如順一の長財布を手に持ちニタニタ笑う、金髪の男とすれ違う。
(え…あれ、俺の財布だよな…)
通り過ぎてから振り返り、男を凝視する。
男は順一のものと思われる長財布をパンパンと太ももに当ててゆっくりと店内の外に向かって歩く。
(い、いや、あれは俺のだ。いや、、まて、万が一ちがかったら…?なんかガラが悪そうだし、、警察に電話しようか…)
(いや、そんなことしてる時間がはあるわけない。こういうのは現行犯で捕まえないと。)
決心がつかないウチに男は店内の出口に辿り着き、外に出ようとする。
(まずい。店の外はすぐに駐車場だ。車だったらもう捕まえられない!)
(ふざけんな!あの10万は俺とすずが必死に貯めたお金なんだよ!明日の前家賃を支払わないと三日目で追い出される!ふざけんなふざけんなふざけんな!)
順一は怒りの感情に任せたまま、足早に男に近づき、男の右手を押さえた。
「お、おい!この財布俺のだろ!!」
振り返った男はまぶたと鼻にピアスをしている。
金髪の出で立ちと、目の据わった人間味のない目つき。
順一は最悪のトラブルに備えて、近くに人が数人いることを確認した。
「おい!聞いてるのか!」
「え?」
「それ!その財布!俺のだろって言ってんだよ」
「あ、これ君のなの?」
「は?返せよ」
「あ、うん笑」
男はあっさりと順一に財布を手渡す。
順一はすぐに財布を開けて中身を確認した。見たところカードも現金も無事のようだった。
順一は迷った。このまま男と離れるか、それとも警察に突き出すか。だが、警察沙汰になって下手に逆恨みを買うことになりたくもない。
なによりも万が一取り調べの最中に自分の住宅がこの男に知られたら、すずが危ない気もする。
男がこのまま引き下がるなら、自分もなかったことにしよう。
そう、思った矢先だった。
男は意外なことを口にする。
「あのさー。君の財布なら返すけど、それ届ける予定だったのよ。」
「え…?は、はあ?届けるなら店員に普通届けるだろ?!」
順一は店外に出るまでの男の行動を追っていた。
届けるなら店内の店員に普通は届ける。
まさかお店の中で拾ったものを警察に届けるとは考えづらい。
「え、いや、だから店員に私に行こうと思ってたんだって」
「あのな!お前が店の中から出てきたの知ってるから!店員ならそこら辺にいただろうが」
正義感が元々強い順一は徐々にこの男の態度と言動にイラつき始めていた。
財布は返ってきた。周りにも人が大勢いる。出入口付近のこの場所は人通りも多く、事実、もう何人もが二人を見ながら通り過ぎている。
いざとなればもっと大きな声で叫べば人だかりもできるだろう。
完全に強気な態度に出る順一。
何よりも悪びれる様子のないこの男が許せなかった。
「え?笑。だからね笑」
男は相変わらずニタニタしながら答える。
順一は男の話を遮っていい加減にしろと叫ぼうとした。
まさにその時だった。
『あのーお客様』
振り返ると、そこには小太りのエプロンした中年の女性が立っていた。
「あ。ども」
『お客様。先ほどは失礼しました。どうかされましたか?』
「いや、この人がなくしたみたいなんだけど、俺がネコババしたって思ったみたいでね」
「え...」
『お客様大変申し訳ございません。こちらのお客様が財布を拾ったとレジに持ってきていただいたのですが、あいにくそのタイミングがすごく混雑をしておりまして。私が、よければB棟のお客様センターへ持って行っていただくようにお願いしてしまったのです』
「え......で、でもB棟?」
『はい。こちらはA棟でございまして。お客様センターがございますのは資材売り場などがありますB棟の入り口なんです』
ホームセンターはA棟とB棟は別棟になっており、L字型に建設されていた。
店員が指差すB等の入り口付近にはたしかに【お客様センター】と表示がある。
A棟の店内から歩いてもつながっているのかもしれないが、確かに一度出て届ける方が近道そうだった。
「あ、そ、その、、、す、すいません」
事態を飲み込んだ順一は顔を真っ赤にして、店員に謝罪をした。
『いえいえ。私がお客様に届けるように安易にお願いしてしまいました。もしや落とし主の人とトラブルになったのかとこちらに来て正解でした』
「い、いえ、、その...」
「まあ、おばちゃん。っていうことだから。わざわざレジ止めて来てくれたんだろ?助かったよ笑」
『こちらこそ恐れ入ります。では、ここで失礼しますね』
笑顔で対応する男に安心をしたのか、店員は早々に店内に戻る。
順一は自分の早とちりが招いたこの男への対応を心底後悔した。
「そ......その......本当にすいません......」
「おう。立派な冤罪だけどな笑」
「そ、そうですね...」
「あのよ。店員よりも先に俺に謝罪じゃね?疑ったことよりも、そこが一番おかしいよな」
「ほ、本当にすいませんでした...」
あまりの気まずさに順一はその場を一歩も動くことができなかった。
ニヤニヤしていたのはこの男の外見からは想像しずらい感じの良さで、店員への対応や、自分への言葉も振り返ると全て誠実だった。
喧嘩腰の自分に対して、キレ返す様なこともしなかった。
順一はそう思い直して、自分の行動を恥ずかしく思った。
一刻も早くこの場から立ち去りたかったが、自分から離れるのは違うと思い、男の出方を伺う。
意外にも感じのいいこの男なら許してくれそうだと期待した。
だが、ある女の登場で順一の期待は崩れ去ることになる。
「おーーい?拓海。おせーってばwっていうか何ずっと話してるの?知り合い?」
振り返った場所にいたのは、ショートボブの女だった。
やっぱりと拓海同様、目が笑っていなかった。
「あ。里緒?笑。出てきちゃった?笑。車にいろよ」
「いや、何事かと思ってw」
この女の登場は絶望。
だって、里緒だもん...。
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